補聴器を検討している方へ
聞こえが悪い方の聴力を補う方法や、耳鳴りの治療法の一つとして、補聴器の装着があります。「補聴器をつけても、うるさいだけ」「音は聞こえても言葉が分からない」このような印象から、補聴器をあきらめてしまう方、購入しても使わなくなってしまう方はたくさんいらっしゃいます。メガネとは異なり、補聴器はすぐに使いこなせるものではないからです。
脳の機能がもたらす現象と難聴のリハビリ
脳はひそかに聞こえの感度調整を行っています。電車の中のように騒々しい環境では感度を下げる一方、深夜のように周囲が静かになると、少しでも音を聞き取ろうと脳は音への感度を上げます。難聴のある方の場合、ずっと静かな環境に置かれて音への感度が上がっているので、補聴器のつけ始めはうるさく感じます。そして長年の難聴があると、感度の調整機能が働きにくくなっています。
また、脳は無意識のうちに情報を取捨選択していて、自分にとって必要な音を意識にあげる働きをしています。
騒がしい環境で会話ができるのはこの働きのおかげです。しかし、補聴器により聞こえの環境が大きく変わると、この機能がすぐに働きません。そのため、どの音が必要かを脳は識別できず、決して大きな音ではない様々な音をうるさく感じてしまいます。つまり、音に過敏な状態となります。
この聴覚過敏の問題は大半の方は解決できます。補聴器をつけて長時間過ごしていると、脳の神経回路はだんだんと組み変わっていきます。この過程で大切なことがいくつかあります。
〇補聴器を1日10時間以上つけて、騒々しい音も含めて色々な音を聞きに行く
〇我慢できない程の大きな音は店舗で調整してもらう
〇こまめに補聴器の調整に通い、段階的に進めていく(購入後のアフターフォローのしっかりした店舗での購入をお勧めします)
快適に聞こえるようになるまで、早くても数週間、高齢者では3か月以上かかることもあります。この期間中は、補聴器の調整を段階的に変化させることが望ましいです。
補聴器フィッティングと補聴器の効果を測定
日本での補聴器購入者の満足度が欧米と比べて3分の2というデータがあります(Japan Trak2022)、実際、補聴器を購入したけれども満足できないと病院に来られる方はいらっしゃいます。
補聴器のフィッティングが適切でないからです。
補聴器フィッティングとは、補聴器をその方の耳や超慮kうにあった適切な状態にすることです。繊細な調整だけではなく、機器の選択、生活状況に応じた提案など、その方にあった補聴器にすることが大切です。
補聴器のフィッティングは購入後も続きます。
〇調整した補聴器をつけて、聞こえ具合を測定
〇調整した通りの音が出ているか、補聴器の出力を測定
〇調整した補聴器をつけて、ことばの聞き取りを測定
これらを行うことで、最適な調整が可能となります。
認定補聴器専門店との連携
当院では、補聴器相談医として、補聴器の活用または試す価値があると判断すれば近隣の認定補聴器専門店への情報提供書を作成しています。認定補聴器専門店には認定補聴器技能者が在籍しています。貸し出し視聴がお勧めです。
一般的に、補聴器のフィッティングは、高齢になればなるほど難しくなります。補聴器を始めるタイミングは聴力検査の数値によるものではなく、「その方の生活において聞こえづらさ」を感じた時になります。先延ばしは、脳の神経回路の組み換えという点で調整の難易度が上がります。また、騒音化での聞き取りは、両耳で聞くことに価値が大きいことわかってきました。補聴器の満足度は価格ではなくフィッティングで決まります。
補聴器を有用なものにするためには、ご本人の補聴器に対する前向きな姿勢がとても大切です。ご家族のサポートもよろしくお願いします。
